求人サイトを開いて、ため息をついたことはありませんか。
近所のパートの募集を上から下まで眺めて、「どこも、だいたい同じ時給だなあ」と。私はずっと、そうでした。53歳で在宅ワークを始めるまで、自分が住む街の時給が、世の中の当たり前なんだと思い込んでいたんです。
でも、在宅ワークを始めてから気づいたことがあります。働く場所を変えなくても、時給の“天井”は越えられる。
私の街のパート、どこも時給1,000円ちょっと
私の住んでいるあたりは、パートの時給がだいたい1,000円ちょっと。スーパーのレジも、事務も、ちょっとした軽作業も、判で押したように同じくらいの金額が並んでいます。
最初は「そういうものだ」と疑いもしませんでした。でも、いくつも求人を見ているうちに、ふと思ったんです。これ、どこも申し合わせたように同じってことは、その地域で決まっている下限の金額に、みんな合わせているんじゃないかな、と。
実はその勘は、当たっていました。パートやアルバイトの時給には、住んでいる地域ごとに「これより下げてはいけない」という最低ラインがあって、近所の求人は、たいていそのラインのすぐ上に張りついているんですね。だから、どこを選んでも、似たような金額になる。
つまり、地元で働く限り、時給は自分の努力やがんばりとは別のところで、ある程度決まってしまっている。これが、私がずっと感じていた「もやもや」の正体でした。
時給は、住んでいる地域でこんなに違う
この最低賃金は、都道府県ごとに金額が違います。国(厚生労働省)が毎年決めて公表しているもので、誰でも調べられます。
2025年度(令和7年度)の時点では、いちばん高いのは東京都で時給1,226円。いちばん低い県だと、時給1,023円。その差は、なんと203円もあります。
最低賃金は毎年改定されます。ここに書いた金額は2025年度のもので、最新の金額は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。地域別最低賃金の全国一覧
たった203円、と思いますか。でも、こうして並べてみてください。
- 1時間働けば、約200円の差
- 1日5時間で、約1,000円の差
- 月に20日、5時間ずつ働けば、ひと月で約2万円の差
同じ仕事を、同じ時間がんばっても、住んでいる場所が違うだけで、ひと月でこれだけ変わってくる。1年なら、もっと大きい。私はこの数字を見たとき、「ああ、地元で時給1,000円ちょっとなのは、私の働きが足りないからじゃなかったんだ」と、妙にほっとしたのを覚えています。
そして同時に、こうも思いました。住んでいる場所で、こんなに差がつくなんて、ちょっと悔しいな、と。
「時給が安いぶん、物価も安い」わけじゃない
「時給が低くても、地方は暮らしにかかるお金も安いんだから、おあいこでしょう」。そう思う方も多いと思います。私も、なんとなくそう思い込んでいました。
でも、実際に暮らしてみての実感は、ちがいます。スーパーに行っても、地方だから特別に安い、とは感じないんです。野菜も、お肉も、日用品も、思っているほど都会と変わらない。むしろ、お店がたくさんあって競争の激しい都会のほうが、同じものを安く売っていたりします。
先日、東京に住む友達と話していて、それを実感しました。卵、鶏もも肉、いろんな食品の値段の話になったんですが、ほとんどの品物が東京のほうが安かったんです。「え、そっちのほうが安いの?」と、正直驚きました。
たしかに、家賃のように地方のほうがはっきり安いものもあります。でも、毎日のように買う食べものや日用品は、住む場所でそんなに大きく変わらない。
つまり地方暮らしは、「時給は低いのに、出ていくお金はあまり減らない」ということが、わりと起きるんです。だからこそ、時給の“上限”を住所で決められてしまうのは、地味だけれど、けっこう痛い。
でも、在宅ワークにはこの「地域の差」がない
私が今している在宅ワークは、会社に雇われる働き方ではなく、クライアントさんからお仕事を受けて、報酬をいただく「業務委託」という形です。報告書を作ったり、事務的な作業をしたり。内容は地味ですが、私には合っていました。
この働き方の何がすごいって、報酬が「住んでいる地域」では決まらないことなんです。
アルバイトやパートの時給は、住む場所の最低ラインに引っぱられます。でも業務委託の報酬は、クライアントさんとの取り決めで決まる。だから、地方に住んでいても、都会の人と同じお仕事を、同じ条件で受けられる。「地方住みだから安く」なんてことが、そもそも起きないんです。
私は地方に住んでいますが、お取引しているクライアントさんは、私がどこに住んでいるかなんて、ほとんど関係なく接してくださいます。パソコンと、ちゃんと仕事をする姿勢さえあれば、住所は問われない。これは、地元の求人だけを見ていた頃の私には、想像もできなかったことでした。
住む場所で、報酬が下がらない。それが在宅の大きさ
在宅ワークにしたら一気に高収入になった、なんて夢みたいな話ではありません。私の収入は、月によって波があって、少ない月はほんとうに少ない。具体的な金額は、クライアントへの配慮もあって控えますが、決してラクラクではないです。
それでも、私がこの働き方を選んでよかったと心から思えるのは、「住んでいる場所を理由に、報酬の天井を決められなくなった」からです。
地元の求人だけが選択肢だった頃は、時給1,000円ちょっとの世界の中で考えるしかありませんでした。でも今は、その壁の外で仕事を探せる。同じ私が、同じようにがんばっても、受け取れるものの“上限”が、住所で勝手に決まらない。この安心感は、お金の多い少ない以上に、私の気持ちをラクにしてくれました。
母のそばにいつでも駆けつけられるように、と思って始めた在宅ワークでしたが、ふたを開けてみたら、「地方住み」という、自分ではどうにもできなかったハンデまで、そっと解消してくれていたんです。
この歳でも、住む場所を理由にあきらめなくていい
もし今、あなたが地方に住んでいて、「うちの近所はどこも時給が安いし、こんなものだよね」と、半分あきらめかけているなら。
その時給は、あなたの価値ではありません。たまたま、住んでいる場所の最低ラインに合わせられているだけです。働き方を変えれば、その壁の外に出る道は、ちゃんとあります。
私は53歳まで、ずっと地元の求人の中だけで考えていました。一歩踏み出すのは、正直、怖かった。いちばん大変だったのは、仕事そのものより、その勇気でした。それでも踏み出してみたら、住む場所に縛られない働き方が、ちゃんとそこにありました。
この歳からでも、住む場所を理由にあきらめなくて大丈夫。それを、地方に住む同じ世代のあなたに、いちばん伝えたいなと思っています。
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